会計な小噺

ベンチャー企業の支援を行う公認会計士によるブログです。主に会計、財務の話をします。

赤字ベンチャー企業にとっての減資

2017年5月15日の官報において、freee株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役佐々木大輔)が約16億円の減資をすることを発表しました。

 

一般的に、減資というとネガティブなイメージがありますが、新株発行による資金調達を行うベンチャー企業にとっての減資のメリットについて考えたいと思います。

 

 1.freee社のケース

freee社は資本金を1億円以下にすることを目的として減資を行っています。


2016年6月30日の貸借対照表を確認すると、資本金は1億円でした。その後、2016年12月に33.5億円を第三者割当増資にて調達し、資本金には増資金額の1/2を入れたと仮定すると、減資直前の資本金は約17億円であると想定されます。
今回約16億円の減資を行っていることを考えれば、資本金1億円に戻すことを目的としていたことがわかります。

 

【freee社の資本金推移】 ※筆者推測

2016年6月:1億円

2016年12月:17億円(資金調達により増加)

2017年5月:1億円(減資により減少)

 

 

 2.減資の目的

では、なぜ資本金1億円以下にするように減資を行ったのでしょうか。

最大の目的としては、外形標準課税の回避だと思われます。

 

外形標準課税は、資本金の額が1億円以上の法人が対象となる税金です。
課税対象となる企業は、資本金の額の大きさで判断されるため、freee社は課税対象企業とならないように資本金を減資したと考えられます。

 

 

 3.赤字企業も課税対象となる資本割

外形標準課税には複数の種類がありますが、赤字の企業に対しても、資本金等の金額に応じて課税される資本割というものが存在します。

資本割については、企業に利益(課税所得)が発生していなくても、資本金等の金額をもとに課税されてしまいます。

 

freee社のケースで考えると、今までの累積調達金額が約96億円であり、仮に外形標準課税の対象となると、資本割の金額だけで、なんと約5千万円の税金を支払わなければなりません。
(資本金等の額は96億円、東京都の税率は0.525%を想定)

 

外形標準課税の判断時点は事業年度終了の日なので、freee社は期末日前のこのタイミングで減資をしたと考えられます。

 

 

 4.まとめ

税法上では資本金1億円の壁は大きく、他にも企業にとっていくつかの大きな違いがあります。
・交際費の損金算入
法人税の軽減税率
・繰越欠損金の限度額 など

ただ、一般的には上記の違いは、利益(課税所得)が発生している企業に影響を及ぼします。

 

一方で、創業期のベンチャー企業などで赤字が続いている場合でも、資本金が1億円を超えている場合は、外形標準課税の資本割を支払う必要があります。

課税所得がなくても、事業年度終了の日における資本金の金額によって課税されるっていうのは馬鹿馬鹿しいですよね。。。

 

第三者割当増資などで資金調達を行った結果、気づいたら資本金の額が1億円を超えてしまった、なんてこともあるかと思います。 

資本金1億円以下にするように減資を行うことは、特に赤字のベンチャー企業にとって、無駄な税金を払わされることを回避するというメリットがあります。

 

freee社のように、大型の資金調達や複数回の資金調達を行っている場合には、金額的な影響額が大きくなってしまうので、減資を実施するメリットはさらに大きくなります。